On the Waters

帆船のことや、ヨットのこと

イギリスで RYA Day Skipper の講習を受ける (4) スタート湾の虹編

講習4日目。今日は、私がスキッパー役を担当。波の荒いスタート岬を越えて、サルコムへと向かいます。

航海日誌

4日目

ブリーフィング

朝、起きてみたら北西の風。よかった〜ということで、PlanAを採用。朝ごはんの後、みんなを集めて今日の航海計画についてのブリーフィング。

  • 北西の風なので、サルコムに行きます。
  • 9:00に出航して、まずはスタート湾をめざして、そこでアンカリングして昼ごはん。
  • 14:00に出航、スタート岬をまわって、サルコムをめざします。この部分は向かい風になる可能性が高いです。サルコムへの到着時間は、16:30です。
  • ハザードは、2かしょ。波が荒いスタート岬沖とサルコムの入り口の浅瀬です。しかし、サルコムへの到着予定時間は干潮の2時間前なので、浅瀬については問題ありません。

ブリーフィングの最後は

Are you happy with this plan?

みんなが、yes! と言ってくれたので、航海計画は決定。

英語でブリーフィングなんてできるのかなぁと思っていたけれど、使う用語は決まっているので意外となんとかなった。

出港

9:00に出航。風は、左舷側30度くらいから。ステイスルを使って出航するには、最高のコンディション。スプリングをオフして、ステイスルをあげて、バウラインをオフして、スターンラインをオフして、次々とオーダをださないといけない。あー緊張した。まぁ、有能なクルーがほとんど自分たちでやってくれちゃったのですけれどね。

メンスルをあげる

無事出航した後は、港の外へと続く水路をエンジンで進みながら、今日のメイト役のグラハムと、どこでメンスルをあげるか相談。メンスルをあげるためには、帆への風の影響を最小限にするために、船首を風上に向けないといけない。つまり、今は追い風で走っているので、メンスルをあげるためには、180度船を回転させなければいけないということ。「無理しないで、このまま機走で港の外まで出てから帆をあげようね。」とグラハムと話していたら「ここでメンスルをあげられる」とジェスが言ってくる。「いや、追い風だし」と抵抗するも「十分なスペースがあるから大丈夫」と言われて、しょうがなく水路の途中でメンスルをあげることに。通り過ぎる他の船をかわしながら、船を回して、帆をあげるなんて、絶対無理!それでも、有能なグラハムに舵をまかせて、なんとかあげる。

港をでてほっと一息つくと、STA Stavros S. Niarchosが潮待ちをしていた。

スタート湾でアンカリング

風は、北西だったので、アンカリングポイントまでアビームで、一直線。気持ち良く帆走していたら、ジェスが今度は「いい風だし、ジブをあげたいと思うんだけど」と言いだした。今でもいっぱいいっぱいなのに、難易度あげないでよ!しょうがないので、しぶしぶ No.2 ジブをあげる つもりが、間違って、「No.1 ジブをあげろ」とオーダをだしてしまった。あれ?No.1 って大きいほうだよね。やばい、間違えたと思ったけれど、すでにクルー達は嬉々として帆をセットしているので、黙っていることに。これ以上、風が強くならないことを祈る
さて、次の難関はアンカリング。どこでアンカリングするのか?チェインの長さはどれくらい?スキッパーが決めて指示しないといけないと言われても、アンカリングの指示なんてしたことない。ジェスに教えてもらうまま、30mのアンカーを用意させて、水深計で5mになったら「アンカーを落とせ」のオーダをする。なんとか係留して、ほっと一息。

ここで昼御飯。天気がよかったので、デッキでのんびり。虹もでたりして、最高に気持ちがよかったです。もう十分スキッパー役を堪能したし、これで終わりだったらどんなによいことか。しかし、まだ半分。これから午後の航海が残ってるんだよなぁ。そして、午後の航路の方がずっと大変なのだ。

ハザード1:スタート岬

午後は、また、アンカーをあげるのが一仕事。全部人力なので。
ジェスからスタート岬をまわって風の強さを確認してから、どのジブを使うかを決めた方がよいとのアドバイス。そこで、まずはメンスルとステイスルだけをあげてスタート岬に向かう。スタート岬を回ったとたんに、きたきた強烈な波。風は強くないのに、波が高い。スタート岬沖は、潮の流れが強いため、波が高くなるとのこと。「スタート岬は、このエリアでは、ケープホーンと呼ばれているんだ」とグラハム。岸から遠ざかると波が高くなるし、でも岸に近づきすぎると座礁しそう。ジェスには、コンパス進路でヘルムを指示しろと言われるけど、難しい。

向かい風では進まない

なんとか、スタート岬を越えて、サルコムに向けて進路をとる。進路は北西になるので、ここからは向かい風。

沿岸に沿ってタックを繰り返して進むのか?それとも、一直線に沖へでて一回のタックで港に入るように進路をとるか?」とジェスに聞かれる。

「沿岸をいく」と答えると、

「タックが多いのは大変だぞ」とジェス。

「それでも、今の風の状態では沖に出ない方がいいと思う」と答えると。

正解!

「なんで、そんなこと聞くの?」と聞くと。

わざと間違った提案をしているんだ」だと。

必死なんだから、余計なことするな〜。

昨日よりも風が弱いので、なんとか、風上にのぼっている。しかし、もうすでに17:00。このままだと、あと数時間はかかるな。どうしようと思っていたら、ミランダが

「エンジンをかけてとっとと港に入りたいのだけれども、スキッパー許可いただけますか?」と聞いてくれた。

いい加減みんな疲れていたので、賛成。ジブとステースルをおろして、エンジンでサルコムに向かう。

ハザード2:サルコムの浅瀬

サルコムの係留場所までの水路がまたやっかい。遅くなったせいでほぼ干潮時刻になってしまったので、通れる場所が水路の左端しかない。ジェスが「あそこに赤と白の導標が2つ見えるだろう。その2つがまっすぐに重なるように船を向けるんだ」とのこと。わぁ、ヤマネコ島の秘密の港みたいだ。夜間航海用には、導灯(縦にならんだ2つの白いあかり)もあって感動。なんとか、最難関の入り口の浅瀬を通り抜け、ほっと一息。ここからは、左舷側に赤のブイ、右舷側に緑のブイを見ながら、進んでいけばよいのです。ヨーロッパはリージョンAなので、日本とは左右が逆なんだよね。

ヘルムオーダ

ヘルムをお願いしていたイアンに「赤と緑のブイの間をすすんで」とオーダしたら、ジェスが「ダメだ。ちゃんとオーダーしろ。」とのこと。ヘルムの後ろに立って、進行方向をみながら、オーダーをだしていく。

  • ハードスターボード
  • ミッドシップス
  • ハーフスターボード

ティラーの位置でオーダをだすのよね、これが。つまり、船を左に向けたいときは、「スターボード」と言う。イギリスでは、このオーダリング方式が舵輪が導入されてからも、ずっと続いていたということなのです。

係留

サルコム川をさかのぼって、係留場所まで。今日はポンツーンが空いていなくて係留ブイ。昨日練習したのでなんとかなるかなと思ったけれど、風をみて、潮をみて、まわりの船をみて、どっちからアプローチするとか全部決めないといけないので、なかなかこれが大変。2回失敗してやっと係留できた時には、本当にほっとしました。

みなさん1日、なれないスキッパーにつきあってくれて、本当にありがとう。

今夜は、明日のスキッパー役のコニーが、チャートテーブルにはりついている。明日は、私はもうスキッパーではないのだ。最難関部分をなんとやりとげて、一安心。

5日目の航海は、こちらから。
onthewaters.hatenablog.com