On the Waters

帆船のことや、ヨットのこと

イギリスで RYA Day Skipper の講習を受ける (6) MOBと夜間航海編

講習6日目。良い天気で風も穏やか、トー湾でのんびりと思いきや、まだまだ講習内容が盛りだくさんで、ゆっくりする余裕はありませんでした。

航海日誌

6日目

出港

今日は、夜間航海の予定なので、朝はゆっくり起きて、11:00に出航。今日の出航時のスキッパー役は、ダン。ダンの指示で、Searcher 側のギャラリーに見守られて、あせりながらもやいを解く。案の定からまってしまい、あたふた。見かねたBorder Force のお兄さんが手伝ってくれようとしたら「トレーニング中だから、手を出さないで」とミランダ。きびしい。

なんとか出航して、今日は、昨日までと逆方向 トー湾 (Torbay) の方へ向かいます。湾内はおだやか。湾内で帆走している分には、かなり安心だし、ちょっと遠出すれば、サルコムやプリマスや素敵な港がたくさんあって、本当にいいところだなぁ。

MOB (落水者救助訓練)

湾内で、ヒーブツーにして、緊急時の対応についての口頭試問。初日に聞いたことをちゃんと覚えていますか?の確認ということ。

その後、メンスルとステイスルだけあげて、落水者救助訓練。フェンダーにもやいづなを結びつけたものを落水者に見立てて、海にぼちゃん。デイスキッパーコースの3人が順番にスキッパー役を担当して練習。
まず、速やかに落水者に近づいて、状態の確認&浮き輪 (マーカ) をなげる。その後、再度、今度は、風下から近づいて、船を風上にたてて静止し、ボートフックを使って拾うという手順。誰がpointing するのか、誰がMayday call を打つのか、ボートフック担当は誰で舷はどちら、次々と速やかにオーダをださないといけない。かなり無理。
グラハムは一回で成功。コニーは、拾い上げるのを一度失敗した後、再度船を回して、無事成功。
私も、優秀なクルーのおかげで、無事救助できた。ほっとしていたら「これじゃあ、だめだ。まだ帆に風を受けている。ほら、帆走しているだろ。」とジェスに厳しい顔で指摘されてしまった。あぁ、確かに。優秀なクルーのおかげで救助できちゃったけれど、船は完全に止まっていなかった。風向きの確認が甘かったみたい。落水者救助のテストは、失敗かぁ。こんな調子でデイスキッパーの認定をもらえるのだろうか。心配になってくる。

トプスルをあげる

そろそろ13:00をまわり、おなかがすいてきたので、ヒーブツーで昼ごはん。広い湾を独り占め。天気も良いし、とっても気持ちがいい。午後からは、湾内で帆走。風がおだやかだったので、メンスル、ステイスル、ジブ、フライングジブ、トプスルのすべての帆をあげる。

やっと、トプスルがあげられた!

私があんまりトプスルに興味深々なので、ジェスは不思議そうな顔。でも、ヤマネコ号のトプスルのシートのとりまわしは、Ami号や海星と違っていて、どうなっているのかなぁとずっと疑問だったので。ヤマネコ号に近い時代のGolden Vanityのトプスルの構造を是非確認したいと思っていたのでした。

疑問点1: トプスルのシートはどうなっているの?
ハリヤード、シート、ダウンホールの3本で、ヤマネコ号と同じ。

  • ハリヤード:帆を上げるのに使う
  • シート:帆のクリューをガフに沿って広げるのに使う。
  • ダウンホール:帆をおろすのに使う。それから、帆を下方向に引っ張って広げるためにも使う。

疑問点2: タックの時はどうするの?
タックを変えても、トプスルのタックをガフの反対側には移動しない。「帆走性能が落ちるのでは?」とジェスに聞くと「しょうがないんだ」とのこと。

トプスルのタックを反対舷に移すためには、いったん、トプスルをおろさないといけないそうです。タック前とタック後はこんな感じ。

トプスルをあげてポートタックで帆走:

その後、スターボードタックに変えた時:

マニアにしか分からない話ですね。すみません。

オーダリングの練習

その後は、フルセイルの状態で、タックやジャイブの練習。デイスキッパーコースの3人が順番でスキッパー役を担当。帆走練習というよりもオーダリングの練習なのだった。
突然「ジャイブのオーダをだして」とジェスに言われる。フルセイルでジャイブ。ちょっと待って、「クルーの人数がたりないよ。」というと、ジェスをクルーとして使ってよいとのこと。インストラクターにオーダを出すなんておそれおおい。思わず、"Would you .." と馬鹿丁寧にお願いしてしまい、笑われる。
次は、何のオーダを出せと言われるのか、どきどき。気持ちが休まる時がなかったです。もうスキッパー役はやらなくていいとばかり思っていたのに。

夕暮れ

夕方が近づく頃、PilgrimとVIGILANCEがデイセイルから帰ってくるのが見えた。どちらも、Golden Vanity 同様、20世紀初めころに漁船として建造された木造の船で、デイセイルから数日の航海、チャーターなどを提供している。2艇の船が、港に近づくと次々と帆を降ろし始める。帆船の上から、他の帆船を眺めるってすごくぜいたくな感じがするけれど、ここでは普通の風景なんだなぁ。

アンカリングして夜ごはん

岬を回り込んだところでアンカリング。今日は、夜ごはんの当番なので、アンカリングは他のクルーにまかせて夜ごはんのしたくにかかる。今日のメニューは、Bangers and mash。マッシュポテトにソーセージを添えて、グレービーをかけたもの。食べたことないけど、作るのは簡単そうだ。よかった。今回の講習は、本当に、イギリスにホームステイして、帆走を習っているようなそんな感じ。
夜ごはんの後は、水上交通ルールについての口頭試問。日本で習ってきたものと同じなので、だいたい大丈夫。

夜間航海

23:00に夜間航海に出発。ブリクサムまで機走で2時間の行程。月がでていて明るいので、ほとんど不安はない。まず、沖に向かって進み、それから方向転換してまっすぐブリクサムへ。沖に東西南北の4つの方位標識が見える。それぞれの光の間隔を数えてみるけれど、何回やっても途中で分からなくなってしまう。
ブリクサムへ向かう途中で、順番にハンドコンパスを使っての船位測定の実践。ベリーヘッド (Berry Head) の灯台、ブリクサムの赤い灯、トーキー (Torquay) の緑の灯の三つの方位を図ってそれぞれ海図に書き入れると、ぴったり一点を指す、はずが一致しないんだなぁ。あたふたしているうちに、ブリクサムに入港準備。入港時のスキッパーは、イアンが担当。
明日は船は動かさないので、今回の航海はこれで終了。もう、パブが開いている時間ではないので、サルーンでラムで乾杯。なごりおしい気持ちと、体力的に限界なので無事終わってよかったという気持ちと半々。物語の中に入り込んだような本当に楽しい一週間でした。

7日目の航海は、こちらから。
onthewaters.hatenablog.com