On the Waters

帆船のことや、ヨットのこと

ノーフォークの川をティーゼル号で帆走する (1) 練習開始編

ティーゼル号そのままの船を1週間借りて、ノーフォークの川を帆走しました。まずは、1日目。さおを使う練習をして、帆をあげます。さっそく向かい風&逆潮を体験しました。

航海日誌

1日目

食料の買い出し

船には、ガス台がついているので料理をすることができます。夜ご飯はパブに行くとしても、朝ごはんと昼ごはんは船の上で食べることになると思うので、そのための食料の買い出しが必要です。前日は、ホーニングの白鳥亭に泊まったので、ホーニング村へ食料の買い出しにでかけました。
ホーニング村には、素敵な個人商店が何軒もあり、肉屋でソーセージとあひるの卵を買ったり、いかにも近くの農家から朝仕入れましたといった感じで店先に並べられているトマトやマッシュルームを選んだりと楽しく買い物ができました。

ここで買った、チーズやソーセージロール、ポークパイ、ケーキ類はとてもおいしかったです。

また、ランサム関連の古書を並べたお土産物やさんは、ランサムファンは訪れてみることをおすすめします。

Hunter's Yardへ

ホーニングからタクシーで、Hunter's Yardへ。Hunter's Yard は、ラダムの町から、ウォルマック水路沿いに下っていったところにあります。建物に入ったとたんに、木とニスの匂い。いっぺんで幸せな気持ちになりました。
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メールで何度も相談に乗ってくれていたマネージャーのビッキーに会って、これから1週間のことを相談しました。メールと電話で感じていた通りの人で、私たちが何をしたいのか聞いてくれて、そのためにYard 側が何ができるか一緒に考えてくれました。ビッキーと話していると、私たちが自分たちで選ぶことをサポートしてくれて、もしも私たちが他の人から見たら最善とは思えない選択肢を選んだ場合もその選択を尊重してくれる そんな感じがして、とてもリラックスできました。
その後、Luna号と対面。今回のメンバーは、私を含めて4人なので、4バースのLuna号を借ります。28フィートなのですが、とても長く感じました。こんな船で川を走れるのだろうか?想像がつかなくて、わくわくします。早速、荷物を積み込んで、昼ごはんを済ませてから出港です。今日と明日の2日間は、ニールがスキッパーを務めてくれます。ニールは、キャビンヨットについての理解が深く、系統だててきちんと 説明してくれるため、とても分かりやすかったです。また、いつも、にこにこと楽しそうで、いっしょに乗っているとセーリングを本当に楽しんでいる感じが伝わってくる最高のスキッパーでした。 ニールに最初の2日間、しっかり教えてもらえたのは、とってもラッキーでした。

乗船

まず、出航準備。オーニングをたたみ、キャビントップを下げます。みな、Hunter's Yard のインストラクションビデオを見て予習してきたので、手際良くすすみます。
www.huntersyard.co.uk

ニールがさお (Quant) を使って、船をHunter's Yard の水路からウォマック水路 (ラダムへ伸びるサーン川の支流) へと出して行きます、ウォマック水路にでてもほとんど風はなく、そのまま、さおを使って水路を上って行きました。まずは、さおの使い方の練習です。Luna号にはエンジンがないので、風がない時にはさおを使うしかありません。みな真剣です。ニールに教えてもらいながら、一人ずつ交代で、さおを使ってみます。さおの使い方は、ランサムが説明してくれている通り。

トムは、長くて丸いさおを持ち上げて川底を突き刺すと、竿の先に体重をかけて押しながら船のへりを船尾に向かう。船尾につくと、竿をぐいと川底から引き抜いて、小走りに引き返し、竿を手操り上げてまた川底に突き刺すと、竿先に体重をかけてティーズル号を押し進める作業を続けていた。
「オオバンクラブ物語」9章 アウトローの誕生

And there was Tom, lifting the long quanting pole, finding bottom with it, and hurrying aft along the side deck, leaning with all his weight against the quant's round wooden head. A jerk as he came to the stern, and back he went on the trot, lifting the quant hand over hand, finding bottom with it and again leaning on it, forcing the Teasel along,
"Coot Club" Chapter IX The Making of an Outlaw

一番難しいのは川底につきさす時で、さおを垂直に構えて手の間を滑らせてさおの重みで水の中に落とすようにします。さおは木製なので、すばやく垂直に落とさないと川底に刺さらずに浮いてきてしまいます。特に潮にさからって、船を進めている時にはとても難しいです。船尾から船首までさおを持って戻る時には、水に浮かせるようにすると軽く運ぶことができますが、川底へ突き刺す際には水の上まで持ち上げなければいけません。さおは5〜6mほども長さがあり、重くて、長くて大変です。「オオバンクラブ物語」では、ディックが初めてさおを使うシーンで、さおが川底から抜けなくなり川に落ちてしまうというエピソードが描かれています。ディックの印象が強かったため、みな、早め早めにさおを抜くように心がけたようで、さおが川底から抜けなくなる事件は起こりませんでした。
ノーフォークでは、機走または帆走している船は、さおを使っている船にゆずらなければならないと規定されています。とはいっても、ノーフォークでの1週間で、私たち以外にさおを使っている船はまったくみかけませんでした。

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さおは、風下舷側で使います。「オオバンクラブ物語」でスターボードも言っている通り、メンシートをしっかりひきこんでブームを固定しておくとやりやすいです。

帆をあげる

しばらく進んだところに船を係留できる場所があり、そこにとめて、帆をあげることにしました。
まず、ジブです。たたんでキャビンの上に乗せてあるジブをバウへ持って行きます。セルフタッキングジブなので、ジブのフット部分にブーム (ジブブーム) がついています。ジブブームの前側についているシートをシャックルでバウにとめます。ジブシートは、端がポート側のデッキに固定してあり、ジブブームについているアイを通して、デッキ上をスターボード側のコックピットへまわします。ジブシートは、スターボード側のみで操作します。
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ジブのヘッドにブロックについたフックをかけて、セット完了。ハリヤードを引いてあげてゆきます。とってもシンプルで簡単です。

次に、メイン。メインは、スロートハリヤードとピークハリヤードの2本であげます(スロートハリヤードはガフのマスト側を、ピークハリヤードはガフの後ろ側を持ち上げます)。まず、スロートハリヤードのフック (1個)、ピークハリヤードのフック (2個) をガフにかけます。それから、トッピングリフトをひいてブームを持ち上げ、ブームを支えているクラッチをはずします。これで、セット完了。ハリヤードをひいてあげてゆきます。
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ここで、スキャンダライズというガフリグならではの便利なテクニックを習いました。ガフをブームと並行になるまで落とすことで、メンスルの面積を減らすとともにセールカーブをくずして、瞬時にメンスルから風を逃がすことができる というものです。ウェルからスキャンダライズできるように、ピークハリヤードはマストに沿って降りてきた後、キャビンの上を通ってウェルから手が届くキャビンの端でクリートするようになっています。さらに、トッピングリフトを引いてブームを持ち上げることで、さらにセールエリアを狭くすることもできます。よく考えられているなぁと楽しくなってきました。

帆走を始める

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さて、帆をあげて、今きた水路を戻り、サーン川へとでていきます。しかし、水路は風がなく相変わらず、さおが頼り。風は弱い北西よりの風、サーン川まででると、引き潮の影響もあり、なんとか後ろから風を受けて帆走を始めることができました。サーンマウス (サーン川の河口、ビュア川との合流点) までくだり、今日はどこまで行くのでしょうか?ニールに聞いてみると、南ウォルシャムか、ラダムブリッジ、もしかしたらランワースまで行けるかも とのこと。「ランワース!」いきなり初日から、そんなところまで行けちゃうなんてすごい。ニールが指さす方を見ると「オオバンクラブ物語」で "the grey square tower of Ranworth church" と書かれている四角い灰色の教会の建物が見えました。あそこがランワース。
ところが、ビュア川にでてランワース方面、川の上流に向かうと、潮の向きは逆になり、風も向かい風。さっそく、川でタックです。風が弱く、川幅もそれほど広くないので、タックしてスピードがのる前に、すぐ次のタックになってしまいます。さらに、タックの直後は、明らかに潮に流されて後退している!
タックしながら、時々風がなくなると、さおも使って、2マイルほどの距離に2時間くらいかかったので、さすがにランワースは諦めて、今日はラダムブリッジの手前に係留することにしました。ビュア川からアント川をさかのぼり、18:00近くにやっと係留。お疲れ様でした。係留には、地面に突き刺して使うロンドアンカーを使います。ロンドアンカーは、ランサムの挿絵そのままでうれしくなります。
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スキッパーのニールは、明日の集合時間を決めた後、家に帰ってゆきました。その後ガス台の使い方やトイレの使い方を説明書をみながら、あれこれ悩み、それでも、なんとかお茶をわかして一息ついた後、1マイルほどはなれた Dog Inn まで歩いて行ってで夕食にしました。

2日目の航海は、こちらから。
onthewaters.hatenablog.com