On the Waters

帆船のことや、ヨットのこと

ノーフォークの川をティーゼル号で帆走する (2) 帆走になれてきた編

天候に恵まれて9マイルを快走し、すっかり、川での帆走に慣れた気持ちになった2日目。やっぱり、そんなに甘くなかった3日目。

航海日誌

2日目

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出航

昨日に続き、今日も良い天気。朝、ラダム橋のそばにあるお店まで食料の買い出しに行きました。ノーフォークの係留場所の近くには、船のお客向けの商店があることが多く、朝早くから開いているのでとても便利でした。

9:30にスキッパーのニールが船に来てくれました。それまでに準備は整えておいたので、早速出航。風は北東。アント川は南北方向にはしっているので、帆を上げるために、船を風にたてようとすると水路をふさいでしまうことになります。そのため、風上にたてるのではなく、進行方向に船を回して、反対側の風上岸に船をつけて帆をあげることにします。船をまわす時には、さおで岸を押すに合わせて、ティラーで漕いでバウを回します。このティラーでこぐ技というのは、結構ポイント。上手にやると、本当にティラーをぐいっと動かすだけで、あの大きな船が回るのです。
反対岸につけたら、手早く帆をあげて出航。今日は、午前中は上げ潮なので、川上のランワースまで行き、お昼ごはんを食べてから午後の引き潮にのってエイクルまで下る計画です。風は北よりなので、のぼりもくだりもアビームでいけるだろうとのこと。

ランワース沼へ

追い風でアント川を下り、ビュア川にでると昨日の苦労がうそのように、すいすい進みます。1時間もかからずにランワース沼に向かうまっすぐな水路の入り口まで着いてしまいました。しかし、水路から観光用のウェリーが2艘でてこようとしているのが見えたため、水路の入り口を通りすぎてさらにすすみ、ウェリーが水路を抜けるのを待つことにしました。しばらく進んだ後、ウェリーが水路を抜けたのを確認してから、反転して戻ります。

ランワース沼へ向かうまっすぐな水路は、追い風ですいすい。水路を抜けると広い沼へでました。しばし沼で帆走練習をしてから、係留場所へ。ランワースの係留場所はせまいので、船を縦に並べて係留しなくてはいけません。風は岸に向かって吹いていたので、係留場所に向かって船を進めて十分に近づいたところで風上に船を向け、バウからマッドアンカーを落とします。その後は風におしながされる形でスターン側から着岸しました。

すぐそばのティールームでクリームティーを頼み、外のテーブルでお昼にしました。

水路をタックですすむには

ゆっくりお昼を食べた後に、14:00頃に出航。帰りは向かい風になるので、ビュア川へ出るまでの狭い水路をタックしながら進みます。週末のためか、パワーボートがたくさん行き交っています。ニールによると、パワーボートはヨットのことを分かっていないので、どうしてほしいかちゃんと伝えないといけないとのこと。パワーボートに乗っている人は、指示されても決して嫌がらないし、むしろ指示してほしいと思っているので遠慮しなくてよいそうです。
ニールはヘルムとシートを私たちにまかせ、バウに立って、パワー ボートの交通整理を始めました。それぞれのパワーボートに、「ポート側を通って」、 「スターボード側を通って」と的確に指示をだしていきます。簡単なようですが、これはかなり、ハイレベルなスキルが必要です。近づいてくるパワーボートとすれ違うまでに、自分たちがあと何回タックするのか、まだ読みきれない私たちには全くお手上げでした。

エイクルへ

水路を抜けた後は、ビュア川を下って行きました。潮も良いし、風も良いので、速 い。4ノットくらいまでスピードもあがりました。

早く着きすぎるということで、エイクルに着く前には反転してビュア川をさかのぼり向かい風&逆潮で進む練習をしたりしながら、17:00前にエイクルに着きました。エイクルでは、風上側の岸に係留したかったのですが、場所がなく、しかたなく反転して風下側の岸につけました。
実際に自分たちで川を帆走してみる前は思いつきませんでしたが、実は川を帆走する時に一番やっかいなのは、岸に木や建物があると風がさえぎられて、風の強さがちっとも一定しないということでした。また、水路の上は風が通り抜けるのか、水路の脇を通る時には一瞬、風が強くなり、あらかじめ気をつけておかないとびっくりさせられます。特にサーンマウスを通るときは、いきなりびゅうっと、とても強い風が吹いてくるので、毎回どきどきでした。

明日の計画

ニールによると、もう十分私たちだけで帆走できるとのことですが、ビュア川での帆走はまだ不安なので、沼での帆走をためしてみることにしました。明日は、ポッター・ハイムの橋をくぐって、ヒックリング沼まで行き、そこに捨て置きしてもらいます。距離もあるし、ポッター・ハイムの橋もくぐるので、明日もスキッパーをお願いすることにしました。
ヒックリング沼へ向かう途中に、Hunter's Yard があるので、お昼にそこにたちよって、シャワーを使わせてもらいます。係留場所の近くには公共シャワーがあるもの、と思っていたのですが、最近の船にはシャワーが完備されているためか、全く見かけませんでした。
メンバーの1人は、最初の2日間のみの参加なので明日の朝お別れです。今日の夜ご飯は、船で料理をすることになりました。缶詰のチキン&マッシュルーム パイを船のオーブンで焼いて、缶詰のスープ温め、船がヒールした時に割れてしまったアヒルの卵の目玉焼きと豪華なメニューになりました。

3日目

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強風

今日は北よりの風のため、ヒックリングに向かうのは向かい風。そして、風は5mオーバーと強く、「これは、私たちだけだったら、今日は出航できなくて、船でトランプだね。」と言い合いながら、スキッパーの到着を待ちます。
天気は悪く、時折、雨もぱらつきます。予定より1時間ほど遅れて、今日のスキッパーのリチャードが来てくれました。リチャードによると、今朝いきなりHunter's Yard からスキッパー依頼の電話がかかってきたそう。さらに、普段はハーフデッカーと呼ばれるディンギータイプの船のスキッパーをしていて、キャビンヨットには慣れていないとのこと。それで引き受けてくれたなんて、なんてよい人なんだろう。
しかし、状況は最悪。2ポイントリーフで帆をあげて、船をだそうとしますが、風下側の岸に係留している上に、今の時間帯は潮も逆のため、とても大変でした。エンジンがないので、岸をおして、バウを風下側に回そうとするのですが、風と潮に戻されてしまいます。何度も何度もトライして、やっと出航できた時には30分以上たっていました。

今日で船を降りる友人が岸から心配そうに見守る中、ビュア川をタックで上っていきました。彼女には、最後の重要な任務が与えられていました。それは、帆走するLuna 号を岸から撮影すること。タックを繰り返し徐々に小さくなっていくLuna号の姿は感慨深いです。この時、船の上では必死だったのですが、外からは全然分かりませんね。

向かい風

なんとか出航しても、Hunter's Yard までは向かい風に逆潮。おまけに、私たちの中で一番の有能なメンバーが下船してしまったので、大幅な戦力ダウンです。リチャードにヘルムとシートをまかせ、タックでのぼっていきました。たまにタックに失敗すると、川岸の葦につっこんでとまってしまいます。その時は、さおの出番です。さおで川岸を押してバウを返して、川の真ん中へとでていきます。途中で後ろから来た、Hunter's Yard のハーフデッカー (ディンギータイプの船) が、私たちを追い越してゆきました。軽そうでいいなぁ。

11:00に出航して、サーン川のウォマック水路まで着いた時には、12:30過ぎでした。後から振り返ると、4マイル程を1時間半で来ることができていて、逆潮でタックと考えると上出来の部類だったのですが、この時にはかなり大変な状況のように感じてしまっていました。船の雰囲気がなんだか重〜い感じになってしまったことが、この日の一番の失敗だったと思います。確かに、風向きも天気も悪かったけど、ノーフォークなんだからこれくらいあたりまえ、たいしたことないさと思っていられたら、この後の展開も変わっていたのではないかなと思います。

マッドアンカー

ラダム へと続くウォマック水路に入ってくると、さらに状況は悪くなりました。風は完全に向かい風。そして水路が狭いので、タックで進むのはかなり難しいのです。タックを繰り返して、本当にちょっとずつ進んでいきますが、何度目かのタック失敗の時に、とうとう前にすすめなくなり、潮に流されはじめました。そこで、リチャードが、こういう時は、まずはマッドアンカーで船足をとめるんだと言って、マッドアンカーを用意し始めました。マッドアンカーは、フォアピーク (船首のロッカー) の中に入っています。この時、事件が起きました。私はヘルムにいたのでバウの状況を正確に把握できていないのですが、どうも、英語による意思の疎通がうまくいかず、マッドアンカーをバウの金具に結びつけずに投げ入れてしまったようです。参加メンバーの全員が英語が堪能なわけではないので、私が気をつけなければいけなかったのですが、すっかり意識から抜けてしまっていました。今回の全行程中、最悪のミスでした。

Hunter's Yard に帰る

幸い、両側を葦に囲まれた狭い水路の中だったので、吹き流されるまま岸に寄せられて行き、葦を掴んで、なんとか岸が開けているところまで移動して、そこにロンドアンカーで落ち着きました。Hunter's Yardまでは、あともう少しなので、リチャードが Yard まで歩いて行ってくるとのこと。こういう時は、お茶だよね。とすかさずお湯を沸かし始めました。しかし、お湯がわくより前に、Hunter's Yard からエンジンつきのボートが迎えにきてくれました。ボートにおしてもらって、無事 Yard にたどり着き、バースに係留。メンスルのリーフをほどいてたたみなおしたりなどの、船の整理をし終わったら、15:00前でした。リチャードは、今からヒックリングまで連れて行ってあげると言ってくれましたが、さすがに申し訳ないし、私たちも一旦落ち着いた方がいいと思ったので、今日は、予定を変更してHunter's Yard で泊まることにしました。

4日目の航海は、こちらから。
onthewaters.hatenablog.com