On the Waters

帆船のことや、ヨットのこと

ノーフォークの川をティーゼル号で帆走したい

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ノーフォークの川を、帆走してみたい。これも、何年も前から温めていた野望でした。細い川を風の力と潮の流れだけで、帆走するのってどんな感じなのでしょう?川が曲がるたびに、風の向きは変わるし、向かい風では当然タックです。全然、想像がつかない!じゃあ、やってみなくちゃ。

ノーフォーク湖沼地方

オオバンクラブ物語

「オオバンクラブ物語」は、アーサー・ランサムの「ツバメ号とアマゾン号」シリーズの第5巻で、イギリス東部のノーフォーク湖沼地方が舞台です。第4巻の「長い冬休み」でツバメ号とアマゾン号の乗組員と出会い、セーリングを習おうと決心したディックとドロシアが、イースター休暇をノーフォーク湖沼地方で過ごせることになり、ロクサムに向かうためドキドキしながら列車に乗っているシーンから始まります。トム・ダッジョンが窓から飛び込んでくるシーンを覚えている人も多いのではないかと思います。

ティーゼル号

ディックとドロシア、バラブル夫人がトム・ダッジョンといっしょに乗り込むのが、ティーゼル号。新訳では、ティーズル号になりましたね。そちらの方が英語の発音には近いのかもしれませんが、やはり慣れ親しんだ名前でないとしっくりきません。

北部の川 (Northern Rivers)

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野望のかなえ方

Step1:野望の詳細をつめる

ノーフォーク湖沼地方の北部の川 (ビュア川、サーン川) を、ガフリグ木造のティーゼル号のような船で帆走したい。マストを倒して、ポッター・ハイムの橋をくぐりたい。さおを使って船をすすめる練習をしたい。

Step2:船を探す

ノーフォークの北部の川では、以下の3箇所のボートヤードで、木造ガフリグのセーリングクルーザーが借りられるようでした。

・Eastwood Whelpton (Upton)

Norfolk Sailing Holidays | Eastwood Whelpton Yacht Hire UK

場所的には、ラダム (Ludham) のHunter's Yardが一番よさそうです。そして、Hunter's Yard のWebサイトを読んでみると、ボートは、1930年代に建造されたもので、さらにBBCの"Swallows & Amazons Forever" の撮影でティーゼル号として使われたボートを借りることもできるとのこと。それって、つまり、リアルティーゼル号に乗れるということですよね。ここに決めた!
Hunter's Yard では、4バース (寝棚) 28フィートのLuluby Class、3バース24フィートのWood Class、2バース24フィートのHustler Classの3種類のキャビンヨット (船室つきのヨット) を借りることができます。1930年代当時から変わったところは、調理設備のみとのこと。ランサムの時代には Primus stove (携帯用の石油こんろ) だったものが、プロパンガスを使用するガス台になりました。
絶対にこの船がいい!と思ったのですが、一つ問題が。

1930年代当時のままなので、エンジンがついていないのです。

28フィートのクルーザーで、エンジンなし。一体どうやって、乗るのでしょうか?

でも、帆走したり、さおを使ったりをしてみたいのだから、むしろエンジンがない方がよいのかもと非常識でポジティブな私たちは考えて、Hunter's Yard の船を借りることに決めました。
Hunter's Yard 以外の2つのボートヤードで貸している船は、もちろんエンジンつきです。シャワーなどの近代的な設備もついていて、とっても暮らしやすそう。この記事の冒頭に載せた写真のような、ロングカウンターのほれぼれするような美しい船たち。私たちのような特殊な趣味を持つ人以外は、そちらで船を借りることをおすすめします。
また、現在では、リバークルーズはパワーボートが一般的のようで、たまにみかけるヨットはガフリグのクラッシックなタイプばかり。FRP製のヨットはほとんどみかけませんでした。

Step3:Hunter's Yardに問い合わせ

エンジンなしの船をいきなり私たちだけで乗れるとは思えなかったので、Hunter's Yard に問い合わせてみました。マネージャーのVikki が、とても親切に、いろいろと教えてくれました。ディンギーに乗れるならば、キャビンヨットに乗るのはそれほど難しくないこと。自分たちだけで乗ることに不安があるようであれば、ボランティアのスキッパーにいっしょに乗ってもらうことができること。
いろいろ相談した結果、まず、最初の2日間はスキッパーにいっしょに乗ってもらって様子を見て、そして3日目にその後どうするか相談しましょうということになりました。

Hunter's Yard

Hunter's Fleet

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Hunterの船は、現在は、the Norfolk Heritage Fleet Trust が所有し、運営しているとのことです。ボートのレンタル屋さんかと思っていましたが、そうではなくて、船の保存と若者へのセーリングの奨励のための慈善信託 (Charitable trust) だそうです。船を借りなくても、Hunter's Yard を見学することができます。スタッフの方にお願いすれば、ランサムの挿絵通りのティーゼル号を見せてもらえると思います。ノーフォークに旅行することがあったら、是非立ち寄ってみられることをおすすめします。

ティットマウス号とドレッドノート号

BBCのドラマ"Swallows & Amazons Forever: Coot Club" の撮影で使われたティットマウス号やドレッドノート号も保存されています。
ティットマウス号

こちらは、ドレッドノート号。想像していたよりも大きく、扱うには技術が必要そうです。

Luna

こちらが、私たちが借りた船 (Lullaby Class Luna) です。1933年建造。28フィート、ガフリグ・セルフタッキングジブ、エンジンなし。
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(画像は、Hunter's Yard のパンフレットから)
http://www.huntersyard.co.uk/wp-content/uploads/2017/01/2017-hunters-brochure.pdf

ティーゼル号と同様に、2キャビン(船室)で4バンク(寝棚)。船の中央のメインキャビンには折りたたみテーブルもありました。メインキャビンとフォアキャビンの間に、トイレとデッキへの階段があるところが、ティーゼル号と違います。それから、ティーゼル号には充電式のバッテリーがあり明かりがつきますが、残念ながら、Lunaにはバッテリーはありません。灯りはオイルランプのみです。Hunter’s Yard の資料によると、1960年代に顧客にアンケー トをとったら、バッテリーは必要ないという結果になったとのことです。

セーリングクルーザーではコックピットと呼ばれる船尾の部分を、ノーフォークの伝統的な船ではウェル (Well) と呼びます。このウェルに調理設備 (ガス台) が配置されています。つまりガス台は外にあるのですが、オーニングとよばれる船をおおうカバーがあるので、雨の時でも大丈夫です。ガス台のみでシンクはありません。
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停泊中はキャビンの屋根をもちあげて、キャビンの天井を高くすることができるのもノーフォークのキャビンヨットの特徴です。

キャビンの中は、こんな感じ。

フォアキャビンには、洗面台があります。蛇口はないので、どうやっ使ったらよいか分からなかったのですが、途中で水を入れたペットボトルを置いておけばよいことに気がつき、文化度が上がりました。

このLuna号で実際にノーフォークの川を帆走するのはどんな感じだったのか?については、こちらから。
onthewaters.hatenablog.com