On the Waters

帆船のことや、ヨットのこと

イギリスで RYA Day Skipper の講習を受ける (1) 乗船編

50フィートの木造ガフカッターでの講習。ランサムの時代の船に乗りながら、さらにRYAの資格もとれてしまうという素晴らしい企画。

前置き

RYA Day Skipper and Competent Crew コース

RYA (王立ヨット協会) の講習で、一番基礎的なコース。デイスキッパー (Day Skipper) コースの受講者、コンピーテントクルー (Competent Crew) コースの受講者がいっしょに受講します。デイスキッパーコースの受講生は、スキッパー (船長) として必要なことを学び、コンピーテントクルーコースの受講生は、クルーとして必要なことを学ぶことになります。そして、講習の終了時には、それぞれ、デイスキッパーまたは、コンピーテントクルーの認定がもらえます。
デイスキッパーコースは、初心者スキッパー向けの講習です。水上交通について、スキッパーの心得、航海計画、操縦、緊急時の対応、気象、機関などについて学び、この講習を受けると、「よく知っている海域で、日中にスキッパーを務めることができるようになる」とのこと。

なぜイギリスまで?

ISPA(International Sail & Power Association)のDay Skipper and Competent Crew コースだったら日本でも、提供しているところがあるようですね。それなのに、なぜ、わざわざイギリスまで受講しに行くことになったのか?ラッキーな偶然が重なってそんなことになりました。おつきあいいただける方は、こちらからどうぞ。
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講習について

Trinity Sailing Foundation

50フィートの木造ガフカッターでの講習を提供しているのは、イギリス、デボン州、ブリクサム (Brixham) のTrinity Sailing Foundationです。講習は1週間。一般的な5日間と比べて長いです。ブリクサム周辺の海域を航海しながら、講習を受けます。使用した船は、Golden Vanity
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船での生活

起床時間やごはんの時間などを含めた1日のスケジュールは、すべてスキッパー、もしくはスキッパー役の講習生が決めます。食事の支度や、掃除、お茶などは、講習生が1日交替で順番に担当します。こちらは当番表。

食事のメニューや材料の買い出しは、クルーが事前にしておいてくれました。クルーがあらかじめ決めてくれた献立にしたがって当番の人が調理を担当します。お茶は1日3回。朝と11時と夕方。

  • 朝ごはんは、シリアルとトースト (バターにジャムにマーマレードに、マーマイト) 。
  • 昼ごはんは、缶入りスープかサンドイッチ。
  • 夜ごはんは、鶏肉のトマトソース煮、カレー(ナンとライス)、ミートソーススパゲティ、ビーフシチューなど。そして夜ごはんには、必ず、すごく甘いデザートがつきます。

地図

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(http:// d-maps.com)

航海日誌

1日目

ロンドンを出て、デボンへ。日差しがまぶしくて、ロンドンから来るとまるで別世界。Golden Vanity が停泊しているブリクサムのマリーナは、想像以上に広く、クラシカルなヨットもたくさん。

なんとか集合時間までにGolden Vanityを探し出し、まず、スキッパーであり、今回のコースのインストラクターでもあるジェスローにあいさつ。したけど、彼はなまりが強くて、言っていることがほとんど聞き取れない。まず、名前が難しいし。私が言いにくそうにしていると「ジェス」でいいよとのこと。

コース選択

早速、ジェスに

コンピーテントクルーコースとデイスキッパーコースのどちらを受講するんだ?」と聞かれる。

デイスキッパーコースを受講したい」というと、難しい顔。

「デイスキッパーでは、実技だけでなく理論も理解しないといけないのだけれど大丈夫か?」

ジェスの話していることは、かなり聞き取れないから、やばいかなぁと思いつつも、デイスキッパーコースを受講するためのバックグラウンド (知識と経験) はあるし、今更クルーのコースを受講しても意味がないので、ここは強気でいくしかない。ひるみながらも、

「デイスキッパーコースを受講した場合にどんな懸念事項があると思うか?」

と聞いてみる。すると、

「理論を理解しないといけないということと、スキッパー役をやらないといけないので英語でオーダーをだせないといけないということ。つまり、ランゲージバリアだ

とのこと。うーん。英語が不自由だから、ジェスにとっては迷惑なのは確かだよね。ちょっと弱気になって、

「コンピーテントクルーコースにした方がいいと思う?」

と聞くと、

「どちらでも、自分にとってハッピーな選択をしろ」

とのこと。それなら、

私は、デイスキッパーコースを受講したい。

と答えると、ジェスが

Are you happy with your choice?

と聞いてきた。yes と言ったら、

「よし分かった」

と、デイスキッパーコースの受講をOKしてくれた。

正直、よかったという気持ちと、大丈夫かなぁやめとけばよかったのではないだろうかという気持ちと半々。”Are you happy?”は、この後、船に乗っている間、何度も聞かれた。自分にとってhappyな選択をするように勇気づけてくれて、そしてその選択を尊重してくれる。こういう考え方は、とっても気持ちがいい。

メンバー紹介

15:00過ぎには全員がそろって、まずは、顔合わせをかねて自己紹介。
クルーは、スキッパーのジェスローとメイトのミランダの2名。ジェスはころっとした体型でひげもじゃ。厳しいけど、青い目の奥はいつも笑っていて、怒られてもあんまり怖くない。ミランダはとにかく頼りになる。きついことをさらっと言うけれど、いつもとても優しく見守ってくれていて、相手の負担にならないようにうまく手を貸してくれる。
トレーニーは、グラハム、コニー、ダン、イアン それに私の5名。グラハム、コニー、私の三人がデイスキッパー コース。グラハムは、帆走については一通りの知識と経験はあるとのこと。パトリック・オブライアンのペーパーバックを読んでいて、クラシックな船の操船に興味がある様子。ちょっと短気なところがあるけれど、基本的には親切。コニーは、高校生くらいの女の子で、以前に、Golden Vanity で、2週間のレース航海に参加して、すっかり帆船が気に入ってしまったそう。それで、きちんと学ぶために今回参加したとのこと。とってもかわいくて、いっしょにいるとなごむ。今後、帆船でボランティアもやりたいと頼もしい。
ダンとイアンの2人は、コンピーテントクルーコース。2人ともディンギーの経験はあるけれど、クルーザーは初めて。ダンは、50代くらいのいかにも英国紳士。話し方がゆったりとしているので、とても助かる。ディンギーにずっと乗っていなかったけれども、また始めたいと思っているとのこと。イアンは、最初は、ちょっと気難しくておたくっぽいかなぁと思っていたのだけれど、実は、一番話しやすかった。意外と細かいところによく気がついて、分からないことがあって悩んでいると、目ざとく気がついて教えてくれたりと、いろいろ助けてもらった。
自己紹介の後、コース内容と船の各部の説明。ミランダが用意してくれた夜ごはんを食べて、今日の講習は終了。

2日目の航海は、こちらから。
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